今回は天祢涼さんの「あの子の殺人計画」を読んで記事を書いていきます。
天祢涼さんは「希望が死んだ夜に」で知っている人が多いと思います。僕もそうです。
その「希望が死んだ夜に」で活躍した仲田・真壁のコンビが活躍する本となっています。
「○○を書いていた人の本か~」って知っているというのは本の購入に際してハードルを下げますよね
あの子の殺人計画 著:天祢涼 ネタバレ無しで紹介 【1文で全てが覆される】
ミステリーが好きでよく読むのですが「お前の読む本は必ず誰かが死ぬよな」なんてことを冗談半分で言われたことがあります。
そんな僕にぴったり(?)のタイトルですね「あの子の殺人計画」

あらすじ
椎名きさらは小学5年生。母子家庭なのだが母親からは虐待を受けている。
しかし、きさらは虐待だとは思っていない。「私が悪いから」「お父さんとの約束を守るため」という風に考えている。
学校でも虐待を受けているということが原因でいじめにあっているが、それも「いじめ」だとは思っていない。クラスメイトの翔太はきさらに「お前はいじめのターゲットになっている」などきさらのためを思って声をかけている。
一方で、JR川崎駅の近くの風俗店のオーナーが殺される事件が発生した。
容疑者に椎名きさらの母親である「椎名綺羅」があげられた。
しかし、綺羅には事件当時家にきさらと一緒にいたというアリバイがあった。
きさらは警察が来ても「綺羅と一緒に家にいてテレビを見ていた」ということを何の疑いもなく答えている。しかも綺羅には風俗店のオーナーを殺す動機がない。
娘(きさら)や綺羅の言動から逆に不自然な点を感じ取った真壁はまだ疑いの目を向けている。そこで、仲田に協力を得ようと働きかけをする。
真壁とコンビを組んでいた宝生は綺羅のあまりの美貌に惚れてしまい、捜査に関して私情が入ってしまっている。真壁から「惚れているのではないか」など指摘されるが否定する。
この本の流れとしては「きさら」目線と「真壁(警察)」目線が交互に出てくるのだが、途中で「断章」として綺羅目線の章が出てくる。
その「断章」で綺羅が人を殺していることは明かされる。
しかし、完璧なアリバイトリックがあるから大丈夫。きさらが暴露することはあり得ないと自信満々な様子。
真壁たちはそのアリバイとどうやって崩していくのか・・・
虐待を扱っている
詳しく言うと貧困と虐待がこの本のテーマになっている。
きさらは一般的には「虐待を受けている」ということになるのだが、きさら自身は「自分自身に原因がある」「躾だから」と虐待とは思っていない。
翔太から自分は虐待を受けていることを言われるのだが、思い当たる節はあるものの「うちは違う」と認めようとしない。
翔太もまた過去に虐待を受けていたことがあるから、その認めようとしない心理まで理解していた。
きさらの担任の先生は、小芝という生徒の方を気にしている。
小芝はきさらよりも、ひどい貧困でそっちの方に頭を悩ませていたのだった。
きさらの受けている虐待の描写が読んでいてつらくなるほどで、子供のころから虐待を受けていると「それが普通」になるということなのかと悲しい気持ちになりました。
「全てを破壊される」一文
本の終盤にこれまで信じてきたものを「全て破壊する衝撃の一文」が登場してきます。
その一文が出てきてから物語は一気に「つながる」ことになります。
「全てがつながる」展開はあっと驚かされます。あれもこれもとすべてが一つになりますので爽快な気持ちにすらなりました。
出来ることなら「三章」からは終わりまで一気読み推奨です。
もし時間がない隙間時間に「三章」の後半部分を読み進めたが最後、続きが気になってその後の用事などが手につかなくなりますよ。
まとめ
今回は天祢涼さんの「あの子の殺人計画」を読み終えたので感想・あらすじを記事にしました。
本の帯に「アリバイトリックに新境地!あなたは絶対に見破れない」とありますが、その通りの展開でした。
アッと驚くトリックに「アッ」と言ってくださいね。
「希望が死んだ夜に」もそうでしたが、今の世の中の問題を物語に取り入れることが上手いなと序盤読みながら思っていました。
虐待をされている本人は、意外と虐待されている自覚がないのだろうな。だから、社会とのつながりや支援が大切なんだろうと考えさせられる一冊でもありました。