又吉直樹さんが「火花」で芥川賞を受賞し時の人となったとき、同じくしてテレビに引っ張りだこになった作家がいました。
それが羽田圭介さんです。
「スクラップアンドビルド」で芥川賞を受賞しました。
又吉さんの「火花」の時と同じタイミングで受賞しました。
「又吉じゃないほう」という呼ばれ方をネタとしてされていた時期もあったようです。
肝心の受賞作「スクラップアンドビルド」は介護が話題になっており、ページ数も少ない為すぐに読むことが出来ました。
あらすじ・感想を記事にしていきます。
スクラップアンドビルド 著:羽田圭介 あらすじ・感想
羽田圭介さんは芥川賞を受賞した時期はテレビ出演が増えました。
作品の「スクラップアンドビルド」よりも羽田圭介さん自身に注目・人気が集まりました。
このブログでは「スクラップアンドビルド」に注目していきます。

内容
健斗・・・勤務していた会社に嫌気がさして退職。28歳無職
健斗の祖父・・・「早う迎えに来てほしか」が口癖。87歳。
〈あらすじ〉
健斗の祖父は「早う迎えに来てほしか」が口癖で早く死にたいと思っていた
そんな言葉を聞いていた健斗は祖父の願いを叶えてあげたいと思っていた。しかし、どうすればよいのか分からなかった。
友人で介護福祉士をしている大輔からアドバイスを受ける。
介護される側の人の行動を徹底的に制限して、脳・身体の両方を使わせないようにして一気に衰えさせる
これだけを聞くと恐ろしい事のように思えます。
しかし、健斗がすることが周りからは「祖父のお手伝いを率先している良く出来た孫」という風に見えるのです。
案の定、健斗の祖父も大変ありがたがりました。
無職の健斗が家族の中で祖父と過ごす時間が一番長いのは自然な流れです。
だから自分が徹底的に祖父の世話を代わりにすることで祖父の願いを叶えることにつながるのでした。
健斗は祖父の希望を叶えるために自分の改造もしました。
✅無職となり完全になまった身体を鍛えました。
✅祖父をデイケアに送り届けるための「早寝早起き」
✅規則正しい食生活
祖父のお世話を何から何までするためには体を鍛えておく必要があるからです。
祖父の願いを叶えるため
と言うと非常に聞こえは良いですが
祖父の願い=「早う迎えに来てほしか」=死にたい
そうなんです。健斗は祖父に死んでもらうために行動しているのです。
はたから見ると「おじいちゃんの世話をする出来た孫」ですから本当の狙いとのギャップで怖さ倍増ですね。
健斗は祖父の身の回りのことを全てすることで祖父の願いをかなえることができるのか・・・
という感じで物語を読んでいくことになるのですが、
しかし、ある出来事で健斗は祖父の本当の想いに気づきます。
祖父がお風呂場で溺れているのを健斗は助けました。
祖父は「ありがとう。死ぬとこだった・・・」と健斗に話しました。
健斗は「死にたいと思ってないの?」と思いました。
祖父の本当の想いに気づいた健斗の変化に注目して読んでいってもらえたらと思います。
現役の介護士がこの本を読むと・・・
僕は、グループホームで仕事をしている介護福祉士です。
介護が題材になっている芥川賞受賞作品ということで、すぐに購入し読みました。
130ページほどという短さも「とっつきやすさ」につながりました。



実際に介護の仕事をしていても「私はね、もういつ死んでもいいのよ」という事を話す高齢者は多いです。本当に多いです。
そして、その家族も「もうここまで長生きしてくれたので、いつ死んでも良いと思ってます」と話す方が多いです。
ですが
冬場に風の予防の意味で部屋の換気のため窓を開けると
「もう寒いな!早う閉めてよ!!死んでしまうわ!!!」という高齢者
また別の場面で
状態が悪化してもう先が長くないかも・・・という説明を家族にすると
「少しでも長生きしてほしいんですけどね・・・」と話す家族
人の本音というのは、分からないものだなと感じる場面が介護の仕事では多いです。
入居している高齢者(利用者)や家族のことをよく観察する
普段からコミュニケーションをとって本音を引き出しやすい関係づくり
が重要だなとこの本を読み終えて思ったものです。
健斗は祖父の言葉をそのまま受け取って行動に移してしまいますが、途中で祖父の本音に気づきます。
この話を書けた羽田圭介さん。介護士目線で尊敬に値しました。



まとめ
今回は又吉じゃない方の芥川賞作家、羽田圭介さんの「スクラップアンドビルド」を紹介しました。
この作品は映像化もされています。
130ページ足らずの量で、とっかかりやすさバツグンです。
内容も介護ということですが、日常生活に即していますのでイメージしやすいので気軽に読み始めることが出来る本だなと思いました。
この作品をきっかけに羽田圭介さんの本をいくつか読もうと思いました。