今回は神津凛子さんの「ママ」を読んで記事を書いていきます。
神津凛子さんは2019年にデビューしています。歯科衛生士の経歴を持つ長野県の作家さんです。今作も長野県が舞台となっています。
ママ 著:神津凛子 ネタバレ無しで紹介 【不気味なまま終わる後味の悪さ】
神津凛子さんの作品では「スイート・マイホーム」を読んでいます。

スイート・マイホームは第13回小説現代長編新人賞を受賞している作品ですが、それがとても面白い(怖い)本でしたので次回作となっている「ママ」も購入を決めて読みました。



あらすじ
後藤成美(なるみ)はシングルマザーです。
「ひとみ」という娘がいますが、その娘の為に生きていると言っても過言ではありません。
シングルマザーですので必然的に生活は厳しい物となっています。保育園の送り迎えに支障のない範囲で働ける職場を探してスーパーの総菜関係のパートにつきました。
生活は決して楽ではありませんが、娘の為に充実した日々を過ごしていました。
近隣住民とのトラブルもありながらではありますが、職場の同僚で同じシングルマザーの木村さんという良き理解者がいました。
「ひかり」の誕生日のことです
ひかりを保育園まで迎えに行き、帰りの道中でケーキを買って木村さんからもらったプレゼントも鞄に入れて自宅まで帰りました。
しかし、些細なことがきっかけでひかりを一人にしてしまいました・・・
あの時一緒に行動していれば・・・
成美は気が付くと、どこかに閉じ込められていました。
目が覚めると男がいました。
相手の男は「成美さん」と自分の事を知っている
しかし、成美は相手の顔を見てもその男が誰なのか全く見覚えてありませんでした・・・
「怖さ」という視点でみると・・・
読んでいる時から思っていたのですが「怖さ」という観点では前作の「スイート・マイホーム」の方が上でした。
充分に「怖さ」はあったのですが、前作の怖さと種類が違いました。
読む人の境遇によって怖さの感じ方の差が出るのではないかと思います。
子供がいる方が読むともっと怖さを感じたかもしれません。
「スイート・マイホーム」・・霊的な怖さ
「ママ」・・相手が誰なのか分からないのに相手は自分の事を知っている怖さ
そんな感じの違いです。
暴力の描写が痛々しい
成美が受ける暴力の描写が途中描かれているのですが、それがかなり痛々しいです。
僕の読解力がないのか、途中で「??」になり読み返すことが何度かありました。
読むのをやめたくなるほどの痛さを感じてしまうところもありました。
後味の悪さがすごい
成美を閉じ込めているのが誰なのか、もちろん明かされます。
ですが「・・・で誰なんだ?」と分かったような分からないような感じがしてしまいました。
個人的にはこの犯人が誰なのか分からない間はとても怖くて先が気になり面白い作品だったのですが、種明かしをされた時から「普通の作品」になってしまいました。
序盤にあったパート先の同僚内であった陰湿ないじめ風の出来事の犯人もはっきりしないまま終わっています。最後の伏線になるのか?と読んでいましたが・・・
読み終わって思ったのは「結局、どうなったの??」という感想です。
読書メーターのアプリで感想を見ても賛否が分かれており「全く意味が分からなかった」という意見もありました。
まとめ
今回は、神津凛子さんの「ママ」を読み終えましたのでネタバレなしで紹介しました。
成美さんを閉じ込めている犯人が誰なのか分からない間は「前作を超えるか?」という勢いでしたが、最後は不発気味に終わってしまったというのが感想です。
この本を読んで、自分が知らない間に誰かに殺意を抱かせてしまっているかもしれない。
という事を少し考えました。パートの同僚内のやりとりも「怖さ」を感じました。そこから発展していくのかなと思いましたが・・・
アプリ内でも賛否の意見があり「否」の意見が多かったというのが正直な所です。
とはいえ、怖い話が好きな人は手に取ってほしい作品でした。
「スイート・マイホーム」が個人的にはかなり良かったので期待しすぎてしまった感が否めません。