2019年 第18回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作品
ミステリー好きとしては見逃せない受賞作品です。とはいえ、この賞の大賞受賞作品を知るのは本屋さんに並んでからです。
本屋で見つけて興味を持ったので購入し読了しました。
感想・まとめを記事にまとめます。
電子書籍もある「UーNEXT」(電子書籍無料登録はこちらから)
紙鑑定士の事件ファイル レビュー 【このミス大賞受賞】
この物語というか本自体にも仕掛けがあります。
まず、目に付くのが作中に出てくる
「警察に届く犯人が書かれた紙」
が本に挟まっています。
そして本書のタイトル「紙鑑定士」にちなんで、4種類の紙が使われています。
〇ページ~〇ページまでは■■という紙が使われています。というのが分かるようになっています。
内容
紙鑑定士 渡部圭
プロモデラー 土生井昇 (はぶい のぼる)
依頼人 曲野晴子(まがの はるこ)
晴子の妹 曲野英令奈(まがの えれな)
まだ、登場人物は出てくるのですが基本的にはこの四名。
渡部・土生井・晴子の3名が中心です。
この物語は
「紙鑑定」を「神探偵」
と間違えて渡部の所に捜査依頼が来たところから始まります。
その捜査に「プラモデル」が絡んでおり、渡部はその方面の知識がさっぱりありませんでした。そこで、仕事のつてをたどって行きついた助っ人が
プロモデラーの土生井だった。
※プロモデラー・・・プラモデルを作るプロ※
土生井は「伝説のモデラー」と呼ばれているが、業界の主みたいな企業に嫌われているため仕事があまりない。
土生井自身は正しいことをしたにもかかわらず企業からは嫌われている。
土生井はゴミ屋敷に住んでおり、認知症を患っている母親と同居している。
この一つ目の捜査は簡単に解決する。
ここで渡部と土生井が繋がった。
そして、二つ目の依頼が渡部の所に舞い込んでくる
その依頼人が曲野晴子だった。
曲野晴子は一人目の依頼人から紹介されて渡部のもとを訪れた。
曲野晴子は家のジオラマ(模型)を持ってきていた。
妹の英令奈(えれな)が3か月前から行方不明になっており
そのジオラマには「StoE」とあり誰かが恵令奈に送ったものではないかと思っている。
渡部なら何か分かるのではないかと依頼しにきたということだった。
渡部はジオラマには詳しくないため、土生井を頼った。
ジオラマの家の屋根が外れることが分かる。家の中に人質を思わせるような人の形をしたものが3つ置かれてあった。一つの部屋ではなく二つの部屋に分かれており、二人は銃を構えている。一人の方は四方を板で囲まれている。そんな状況が作られていた。
晴子はそれを聞き以下の事を教えてくれた
晴子は義父から性的虐待を受けていた
母は父が怖くて守ってくれなかった
英令奈の家出を晴子は手伝った
しかし、義父は英令奈にも性的虐待をした
英令奈は義父に復讐をしたいという願望を持っておりそれがジオラマとして作られたのではないかと話した。よってこのジオラマを作ったのは英令奈かもしれない・・・
この一つのジオラマを巡って一つの事件が明るみになりそれを渡部・土生井が解決していくという話になっている。



紙に関するウンチクが出てくる
物語のところどころに「紙に関するウンチク」が出てくる。
渡部が「紙鑑定士」をしていると知った登場人物は一様に不思議そうな話をする。
紙鑑定士の仕事の説明も兼ねて渡部が紙のウンチクの話をするという流れである。
個人的にはこの紙の話はあまり興味を持てなかった。
作者の歌田年(うただ とし)さんにはこの場を借りて謝罪したい。
ちなみに、紙鑑定士の渡部は個人事務所を経営しているが売り上げが芳しくない。
よって、基本的にはヒマである。
そんなこともありトランプが特技となっている。
「リフルシャッフル」・・・両手の中でアーチを作るように混ぜる
や
「カスケード」・・・滝のようにトランプを上から落とす
を日常的に癖のようにやっている。
途中で話の整理が出来る
渡部が途中で依頼者である曲野晴子に捜査状況を説明するシーンがたびたび出てくる
その時に、話の整理をして晴子に話をしてくれるため読者も
物語の整理が出来るという利点が発生している。
また、本全体で「章」が細かく区切られているため読むのを中断するポイントが非常に作りやすいという点もある。
一度に読む時間を長くとれない人にしても中断するポイントが多いのは助かる。
さらに渡部が操作の進捗状況を整理して話してくれるのも助かるポイントだ。
まとめ
読んでいる途中で、一つ目の事件の事はすっかり忘れていたが渡部と土生井を出会わせるための前説ということで問題ないと判断した。
実は、最後の最後で一つ目の捜査が少しだけ伏線として回収されるのだがそこまで気合を入れて読むようなものではない。
話全体として、捜査が一歩ずつ少しずつ進んでいくような印象を抱いた。
渡部が仕入れた情報を土生井が推理する流れであるのだが、この土生井という人物が「天才」だ。とてもゴミ屋敷に住んでおり、前歯が一本ない人とは思えないほどの頭脳を持っている。
人は見かけによらないとはこのことだと思う。・・・土生井という人を「見て」はいないのだが。
話の中でグーグルマップが何回か出てきたり、模型の描写が出てくるため「映像化」したものを見てみたいと思った。その際、土生井を誰が演じるのか大変興味がある。
本屋大賞受賞作品は「映画化」が既定路線になりつつあるが「このミス大賞」はどうなんだろうか?
読書メーターというアプリで他の方の感想を見ると「ご都合主義」という感じのものが散見された。たしかに、最後に一気に解決に持って行ったような印象もあった。
少々、評価が分かれそうではあるがこのミス大賞受賞作品らしい展開を楽しむことが出来ると思う。