僕が一番推している作家である芦沢央さんの作品
「許されようとは思いません」のレビューをしていきます。
一番推しているというのは
新刊が出れば【無条件】で本を購入するという意味です。
許されようとは思いません レビュー 著:芦沢央
この作品は5話で出来ている短編集です。
・許されようとは思いません
・目撃者はいなかった ※個人的に一番のお気に入り
・ありがとう、ばあば
・姉のように
・絵の中の男
全部読み終えて、好きだったのは
『目撃者はいなかった』
と
『姉のように』
でした。
「目撃者はいなかった」については、ずっとドキドキしながら読みました。
「獏の耳たぶ」「罪の余白」を読んでいる時にも同じようなことを感じたのを思い出しながら読みました。




許されようとは思いません
諒一には結婚を意識する水絵という女性がいた。
しかし、諒一は結婚に踏み切れないでいた
それはなぜか・・・
自分の祖母(すでに亡くなっている)は殺人者だから
祖母のお骨を祖母の暮らした村に納骨をすることになり諒一は水絵と一緒に村にいくことにした。
村に行く道中、諒一は自分の祖母の事(過去)を水絵に話す。
〈その内容〉
諒一の曾祖父がボケてしまい村人に何度も迷惑をかけたことが理由で祖母は村八分にされていた。
祖母は村に40年暮らしたが「よそ者」扱いをされていた
そして、祖母はある日気が付いた
「曾祖父はボケていたのではない。ボケたフリをして村人に迷惑をかけている」
祖母は、曾祖父を包丁で刺して殺した・・・
裁判で祖母の殺害動機が問題になったが祖母は言った
「許されようとは思いません」
目撃者はいなかった
葛城(かつらぎ)は営業マンとして働いていたが、成績がダメダメでいつも最下位だった。
しかし、ある月の成績が良く先輩たちに褒められた。
葛城は喜んだが、すぐ「自分のミス」に気が付いた
一枚で注文を受けたものを【十一枚】と打ち間違えていた
もう訂正するのは間に合わない
葛城はミスを誤魔化すことを決意した
1 注文した11枚の木材を自分で受け取る
2 1枚だけ取引先に納品する
3 残りの10枚は自分で処分
4 その10枚分は自腹で自分の会社に払う
取引先から怪しまれる場面があったが、なんとかその場を切り抜け
誤魔化すことに成功した・・・はずだった
取引先から帰ろうと軽トラに乗ろうとした時
近くで交通事故が発生した
その交通事故が葛城を窮地に追い込むことになるとは、その時葛城はもちろん読者も思いもしなかった・・・



ありがとう、ばあば
雪の降るなかで、ホテルのバルコニーに閉じ込められた「ばあば」
なんと閉じ込めたのは「孫の杏」だった
孫の小さなイタズラかと思った「ばあば」ですが、杏の表情は真剣そのもの。
鍵を開けるように頼みながら、なぜこうなったのかを考える
「ばあば」は孫の杏を立派な子役に育てようと教育していたが、それは明らかに「やりすぎ」だった。
それを「ばあば」は反省して謝るが杏がどう思っているのか分からなかった。
そして杏が「ばあば」に言った言葉でこの話は終わる
読後感がモヤモヤしたまま終わる話。
孫の杏の本当の気持ちは何だったのか・・・
杏に直接聞きたくなった
姉のように
自分の娘を殺したという新聞記事からこの話はスタートする
新聞記事によると母親は容疑を認めているという。
場面が切り替わり
事件を起こした姉をもつ妹の方の話に切り替わる
※「妹=わたし」として書かれている
その「わたし」は常日頃「自分も姉のようになってしまうのではないか」
という思いを抱きながら生活をしていた
姉に対する誹謗中傷をみていた妹は
自分は姉のようになってはいけない。と思うのだが
姉の事件から時間がたっても周囲の人は「わたし」を遠ざける
夫も娘の心配ばかりして「わたし」の気持ちには気づきもしない
「わたし」は自分にも姉のような邪悪な心があるのではないかと
疑心暗鬼になってしまいます。
悪循環が重なり
ついに「わたし」は自分の娘に手を上げてしまい、殺してしまう・・・
物語は、ここから「大どんでん返し」を見せてくれる
その内容についてはもちろん伏せておくが
最後まで読むと「すべてが線になる」爽快なミステリーとなっている。
絵の中の男
ある女性鑑定士(わたし)のところに「浅宮二月」の作品と思われる絵が持ち込まれた
浅宮はかつて夫を殺していた。しかもその殺害シーンを見ていたのが当時、家政婦として働いていたのは絵の鑑定をする「わたし」だった
わたしのもとに届いたのはすぐに「偽物」だと分かったが、あることに気づいた。
この女性鑑定士の(わたし)が最後まで語り続けるという話。
(わたし)は浅宮二月の過去について話をしていきますが
その話をしていくうちに、自分の所に持ち込まれた絵の秘密に気が付く
そこには、今まで気が付かなった事件の真相が隠されていた



まとめ
最初にも書いていますが、個人的には「目撃者はいなかった」と「姉のように」がお気に入り
そして、残念と同時に驚くべきことが・・・
本のタイトルになっている「許されようとは思いません」がイマイチ自分には、はまりませんでした。
とはいえ、本全体の満足度は高かったです。
この本を読んで、しばらく時間が経っているのですが
「目撃者はいなかった」の内容を入力している時に
あの当時感じた「ドキドキ感」が蘇ってきました。
何とかごまかしたと思って、直接関係ないように思われたあの交通事故で
主人公があんなことになるとは・・・
多くの人に読んでもらいたい一話でした。