今回は芦沢央さんの「汚れた手をそこで拭かない」を読んで記事を書いていきます。
このブログで前回「本の紹介」の記事「僕の神さま」と同じ芦沢さんの本です。
1ヶ月で2冊の新刊が発売されるという事で楽しみにしていました。
「汚れた手をそこで拭かない」は独立短編集となっています。
汚れた手をそこで拭かない 著:芦沢央 ネタバレ無しで紹介 【日常の中にあるミステリ】
5話で構成された独立短編集となっています。
芦沢央さんの本で短編集と言えば「許されようとは思いません」がありますが、それも記事にしています。良かったらご覧ください

各ストーリー紹介
・ただ、運が悪かっただけ
・埋め合わせ
・忘却
・お蔵入り
・ミモザ
「埋め合わせ」と「お蔵入り」が特にお気に入りですが、正直どれも良かったです。
全ての話に共通しているのが「お金の問題」が少し絡んでいるという事です。
人間らしさとも言える「ずるさ」が見え隠れしています。



ただ、運が悪かっただけ
余命半年と言われて1年たっている妻
その妻は気になっていることがあった。
夫が何かに苦しめられているように見える
妻は夫に対して「何かがあるならそれを私があの世に持っていくから話してくれない?」
その問いに対して夫はこう話した
「俺は昔、人を死なせたことがある」
その夫の話を聞くとタイトルにもあるように
「ただ、運が悪かっただけ」と言いたくなるような話だった。
しかし、それを聞いていた妻が思いもよらぬ事を発言した・・・
伏線が張られておりそれがしっかりと回収されている話
埋め合わせ
夏休みにプールの水を誤って抜いてしまった千葉先生(主人公)
これがバレてしまっては莫大な水道料金の請求が待っているかもしれない・・・
千葉先生はなんとかそれをごかまそうと、ある作戦を思い付きそれを実行に移した。
しかしその日、学校で唯一同い年の先生である五木田(ごきた)先生と遭遇してしまう。
千葉先生はその五木田先生に計画した作戦通りの行動をしたのだが・・・
この話を読んでいる時に今回の記事で紹介した「許されようとは思いません」の中にある【目撃者はいなかった】を読んでいる自分を思い出しました。隠し事を共有している気分になってハラハラしながら読みました。
最後の最後、不気味な怖さが読者を襲います
忘却
高齢者夫婦が多く住んでいるアパートで熱中症による孤独死が発見された。
孤独死をした老人は「笹井」
電気代を滞納したことによって冷房を使えなかったため熱中症になってしまった。
笹井の隣に住んでいる武雄夫婦。
その事件を知った武雄はあることを思い出していた。
笹井に届いていた電気代の督促状が武雄夫婦の家に間違って配達されていた。
督促状を間違って開けてしまったので笹井の元へ届けようとしたのだが、妻が「私が届けておくわ」とそれを預かっていたのだ。
その妻は物忘れがひどくなっていた・・・
妻としても物忘れの自覚はあり、メモを残すなどの対策はとっていたのだが、督促状を届けることをどうやら忘れたようだった。
武雄は妻の様子を見て「督促状を届けることを忘れた」ことも忘れているんだ
そう思った
笹井の葬式の翌日から妻がこんなことを言うようになった
「何か大事なことを忘れているような気がする」
読み終わるころ「こんな展開が待っていたとは・・・」と驚きました
お蔵入り
無名の映画監督である【大崎】が有名俳優【岸野】とアイドルグループに所属する【小島】のダブル主演の映画を作るチャンスが与えられていた。そしてその映画もクランクアップ寸前という所まで来ていた。
全くの無名である大崎にとってはこのチャンスは何としても物にしたいと意気込んでいた。
しかし、そんな大崎にまさかの情報(悲報)が舞い込んできた
岸野に薬物使用疑惑がかかっている
もしこれが事実だとしたら、映画の公開が中止になる。せっかく巡ってきたチャンスを泡と消えてしまう。
岸野に事実確認に向かうと、あっさりと認めてしまった。
大崎はカッとなってしまい、岸野を殺してしまう。その現場には、岸野のマネージャーとプロデューサーもいた。
大崎を含めた3人は話し合い「大崎が殺した」という事実は無かったことにするということにした。
事件から四日後まさかの展開がまっていた
容疑者として名前が出たのはアイドルグループに所属している小島だった・・・
人間の「ずるさ」が見える話
ミモザ
主人公・・・荒井美紀子(ミーコ)
不倫相手・・・瀬部
荒井のサイン会にかつての不倫相手(瀬部)がやってきた。
荒井には今は既婚者がいる。瀬部は今になって何のためにやってきたのか。
荒井と瀬部は二人きりであうことになり、そこで瀬部は30万円を荒井に請求してきた。
荒井としては、瀬部はサイン会に来たのは「お金のため」ということを見抜いたのだが、瀬部を見返したい一心でお金を貸すことにした。
瀬部は借用書を用意しており、自らそれに記入していた。
返ってこなくて良いと思っていた荒井はコンビニでお金をおろし、瀬部に渡した。
お金を貸した後、荒井は気づいていなかった
本来、お金を貸した側が保管するはずの借用書を瀬部が持ち帰ったことを・・・
どう終わるのかを楽しみに読み進めましたが、2種類の恐怖が待っていました
まとめ
今回は、芦沢央さんの「汚れた手をそこで拭かない」を紹介しました。
どの話も面白く、最後にまさかの展開が待っています。
そして、色々な種類の恐怖が待っています。
一応のお気に入りは「埋め合わせ」と「お蔵入り」ですが、どれも良かったと言えます。
この記事を書きながらも、話を思い出して読みながら感じていた興奮を思い出しました。